深層学習で将来予測して最適行動する強化学習の論文を読む
深層学習で将来予測(Nステップ先)を予測して報酬を獲得する強化学習の論文を読む。
[1707.03497] Value Prediction Network
この論文はDQNの一手先のモデルを数手先を読むモデルに拡張したもので、かつ非常に洗練された構造をもつ強化学習である。
倉庫番問題等の数手先の将来予測を必要とする課題はDQNでは解けないものとして有名である。DeepMindでは下記の様なモデルを提案していたがモデルの考え方は非常に複雑で明瞭ではなかった。
DeepMindのI2Aモデルの倉庫番ゲームの論文を読む - mabonki0725の日記
この点本論文の将来予測モデルの構造がDQNのTree展開になっており、直感的て明瞭で発展の可能性がある。
ここでは観測される状態では行動オプションである
左の箱がコアとよばれこの中の近似関数は実際の報酬によってCNNやNNで学習される。
このコアは次のアルゴリズムで再帰的にTree構造で展開される。
この学習はDQNと同じTD法を多段階に拡張したものと見做せる。
損失関数は報酬と割引率のノルムとなっている。
この論文で重要な知見として、このモデルは課題に依存するモデルベースではなく、DQNと同じモデルフリーとして汎用性があるとしている。
実験:
次の様な20回移動で最大の報酬(水色)を得る課題でDQNと比較している。下図ではDQNでは5個だが、本論のVPNでは6個報酬を獲得している。
下記にこの実装プログラムがある。
https://github.com/junhyukoh/value-prediction-network
回避機能をもつ逆強化学習の論文を読む
NIPS2017で発表されたAbbeel達の回避機能をもつ逆強化学習の下記の論文を読む。
「Inverse Reward Design」https://arxiv.org/abs/1711.02827
この論文は予想外の事象に衝き当った場合の報酬を如何に修正するかの話なので、報酬設定→行動経路→逆強化学習→報酬関数の修正なので逆強化学習の一種として考えられる。
予想外の事象に突き当った場合のロボットが、部分観察MDPの確信度で対処する行動決定とそっくりである。POMDPは確信度が低い場合には、近づいたり、スピードを落としたりして観察がよく出来る様に行動させる場合が多い。
この論文は、ロボットに目的の動作が出来る様に設定する報酬のデザインが誤ったり配慮が抜けてた場合でも、ロボットが当初の目的通りに動作できる様にするものである。
論文の下図の様な例では、デザイナーは報酬を目標=1 砂漠=0.1 草原=-1として、溶岩を思いつかなかった場合が示されている。
現実の世界(本論ではReal World)を相手にすると設計者の意図以外の事象に遭遇する場合が普通であって、この場合溶岩にはまって失敗する。
この論文の意図はDeepMindの様な理想とする環境での知的動作ではなく、Abbeel達は現実の世界の知的ロボットに関心があるので、この様なアイデアを考えたと思われる。
デザイナーが与えた報酬で訓練したロボットの経路を逆強化学習して、報酬関数の重みを以下で計算した場合でも、想定外の事象では重みの信頼度を下げて、回避しょうとするのがこの論文のアイデアである。
ここで
は動作経路
は特徴量
重みの信頼度はエネルギー関数を採用してた次式の事後分布としている。
ここで
は現実世界に対応した真の重み
はMDP過程
は感応度(ハイパーパラメータ)
は特徴量の期待値
は分配関数
分配関数は算出すべき重みが不明であるので一般には計算不能であるが、経路を多くサンプリングして近似する場合が多い。
ここではランダムなサンプリング法(sample-Z)と最大エントフィ法で解いた(Maxent-Z)を使って上記の重み信頼度を計算している。
センサーが未知物体を感知した場合、一つの案として自己位置の認識に下図の様に特徴量に多次元のガウスう分布を使って重みの信頼度を計算している。
想定外の場合では特徴量が変化するので、重みの信頼度が低下し、低い重みで報酬を計算すると、報酬が低くなるので、回避することができる。
実験では分配関数をMaxEnt-ZやSample-Zを用いて重みの信頼度を計算した方が、この手当てをしない場合 Proxyより、遥かに溶岩を回避できている。
右図は未知物体では重みの信頼度の事後分布で計算した実験
左図は未知物体に統計モデルを使用した実験
Negative Side Effects センサーの想定外検知
Reward Hacking センサー情報の相互矛盾検知
Raw Ovservation ガウス分布を使って判定する
Classifyer Feature 識別器を使って判定する
FIRLの論文を読むが難しい
ベイズによる逆強化学習が、杉山先生の密度比による逆強化学習と同じ手法になったので、残る有名な手法はFIRL(Feature Construction IRL)のみになった。
この手法は下記のAbbeel率いるBarkleyチームのLevineによる論文がある。
https://homes.cs.washington.edu/~zoran/firl.pdf
この手法はこれまでの報酬を固定の特徴量の近似関数で表す手法と全く異なっていて、特徴量を回帰木で分解して有意な特徴量を選択しながら、2次計画法で最適な報酬関数を求める方法となっている。
ここで
は熟練者の行動データ
は回帰木で選択した特徴量
は改善対象の報酬関数
は同じ状態をもつグループを繋ぐ正則化項
拘束条件では熟練者の行動範囲であれば、正しい価値関数が計算され、それを逸脱すると、劣化した価値関数が計算される。逸脱した行動は観測できないのでの罰則を与えている。
回帰木は、次式で定義され、枝に含まれる状態を報酬の寄与で分割して、最適な回帰木は上記の2次計画法で算出している。
ここで
は木の枝でこのノードに含まれる状態で報酬に寄与しない側
は木の枝でこのノードに含まれる状態で報酬に寄与する側
は状態が報酬に寄与するか判断する関数
は状態がこのノードに含まれるかの指標
とはさらに回帰木を生成していくが、経験的に浅い分岐でよいとしている。
この論文は式記号も難しく、本当に妥当な回帰木が得られるか判断が付かない。詳しいロジックを追求するには下記のMatlabのサイトがある。
逆強化学習に詳しい千葉大の荒井研究室ではこのFIRLを昨年稼動して発表している。しかしFIRLの優位性を示せてなく記述も簡単すぎて詳しい事がわからない。
ガウス過程による逆強化学習を実装(python)してみる
先日下記の論文について自分の理解を述べたが、文献に沿ったプログラムがあったので、これを自分なりに修正して稼動してみると、完全に自分の理解が誤っていたことが判明した。もし以前の記述を読んだ方がいれば大変申し訳なく、下記にて修正させて頂きます。
Nonlinear Inverse Reinforcement Learning with Gaussian Processes
(1)ロジックの説明
プログラムによって理解したロジックです。
この手法のプログラムを読むと、ガウス過程の逆強化学習は以下の手順で行っています。
① 局面を表す特徴量を選定します。
②熟練者の操作過程の特徴量を記録します。
⑥の尤度(IRL term)が最大になるまで③から⑥を繰返します。
③特徴量の記録から、ガウスカーネルのパラメータを最大尤度(GP probability) で計算します
④次式に従って特徴量と観測された報酬でカーネル過程回帰します
⑤擬似報酬の事後分布で真の報酬を逆算します
この事後分布(GP posterior)は尤度分布と事前分布ともガウス分布なので
理論解で計算できます
⑥真の報酬よりBellman方程式を解いてこの尤度(IRL term)を計算します。
根拠のロジックは次式の式になります。
ここで
は熟練者のデータ
は特徴量
は観測された報酬
は真の報酬
IRL termはBellman方程式の解
GP posterior はガウス分布の事後分布
GP probabilityはガウス過程回帰
(2) 実験課題
5×5のセルにマーク1と2がある。各セルにエージェントは上下左右に移動する
マーク1からの距離が3以内でかつマーク2からの距離が2以内のセルに居るなら報酬を得る
マーク1から3超かマーク1に居るなら罰則がある。
この規則に従うと以下の報酬になる。
(3) 実装した結果
熟練者のデータは上記(2)のルールに従って移動して、その100経路のログを記録している。
この行動記録から上記(1)のロジックで報酬を算出している。
但し、ARD(Auto Relevant Decision 自動関連決定)のガウスカーネルを使用した。
ガウス過程による逆強化学習の結果(右)は真の報酬に近い値となっている。
参照したプログラムが探しだせなくなったので、自分が修正したプログラムを示します。
逆強化学習の課題にPlen2を使う
学校の研究でPlen2を使った逆強化学習を企画しているが、初めてPlen2を使ってみた。
このToyロボットはサーボモータでの稼動点が20点あり、ここに信号を送って逆強化学習の実証実験をする。
このPlen2はArdinoが20個のモータを制御する仕掛けで現在8万円弱とまだ高価である。
Plen2はPC上のWebを使ったコントロール画面で動作を定義する。
PC上のWebサーバがを通じてPlen2と通信する仕組み。
まずは、下のURLに従ってFirmWareをインストールする。
http://plen.jp/playground/wiki/tutorials/plen2/firmware
動作に関しては、下図のモーション・編集はExcelのマクロ記憶の様に保存して、これを呼び出す仕掛けだがこの動作にエラーが出ている。
ガウス過程による逆強化学習の論文を読む
最大エントロフィの逆強化学習の性能はベイズより優れていることは実装してみて判明したが、下記の論文によるとガウス過程(Gaussian Process)を使った逆強化学習が傑出してよい性能を出している。
この論文の高速道路の実験例をみるとパトカーやパトバイクに近い所は人間がスピード抑制をしている事が観測されている。
左上が人間のスピード抑制データ(濃い色)で、GPIRL(ガウス過程逆強化学習)が殆ど等しいことが示されている。ここでの比較先は
MaxEntIRL(最大エントリフィIRL)
FIRL(Feature Construction IRL)
この手法のプログラムを読むと、ガウス過程の逆強化学習は以下の手順で行っています。
① 局面を表す特徴量を選定します。
②熟練者の操作過程の特徴量を記録します。
⑥の尤度(IRL term)が最大になるまで③から⑥を繰返します。
③特徴量の記録から、ガウスカーネルのパラメータを最大尤度(GP probability) で計算します
このは特徴量の正則化項のパラメータですは乱数を振って上式が最大(最尤度)となる値を採用しています。
④式(3)に従って特徴量と観測された報酬でカーネル過程回帰します
これはカーネルを分散とする対数分布ですが、最後にが追加されています。
⑤擬似報酬の事後分布で真の報酬を逆算します
この事後分布(GP posterior)は尤度分布と事前分布ともガウス分布なので
理論解で計算できます
報酬と特徴量のカーネルを使っています。問題は報酬の算出にこれが未定なのに使っています。よってこの式は仮置きの報酬を使って、SGDの繰返しで精緻化する方針としています。
⑥式(2)のは仮置きの報酬よりBellman方程式を解いてこの式(2)尤度(IRL term)を計算します。
ここで
は熟練者のデータ
は特徴量
はガウス過程
は報酬
はの正則化項
IRL termはBellman方程式の解
GP posterior はガウス分布の事後分布
GP probabilityはガウス過程回帰
⑦仮置きの報酬をSGDで精緻化するため、本論文ではL-BFGSを使ったと記述があります。この微分式については下記のSupprementに詳細に記述され、Python版ではこの通り実装されています。
Nonlinear Inverse Reinforcement Learning with Gaussian Processes
ここで諸値は以下で与えられる
エネルギーベースの逆強化学習
ここで
ここでなのでは
実験課題
黄色の位置から3距離までと赤の位置から2距離の場合に居続けると報酬が加算される(左下の赤い範囲)。コマを上下左右に移動して報酬の多寡で強化学習を行った軌跡をデータとして保存する。
強化学習で学習した軌跡でPythonによるガウス過程を使った逆強化学習の結果が右図。一応左図の真の結果に近く細かい報酬が得られている。
ベイズによる逆強化学習をC言語で実装してみた
本郷で行われた強化学習アーキテクト(2018/01/16)は千葉大学Dの石川翔太さんのベイズによる逆強化学習であった。
https://www.slideshare.net/ShotaIshikawa2/ss-86214928
最大エントロフィ法の逆強化学習を実装して見て納得できなかった事は、熟練者の方策変更を反映できない事であった。
その点ベイズでは熟練者のデータを分類して、その方策の移動を隠れ変数として反映できる可能性がある。
以下の文献に従って簡単な、ベイズによる強化学習を実装してみた。
https://www.aaai.org/Papers/IJCAI/2007/IJCAI07-416.pdf
プログラム(python) としては下記のGitHubを参照しました。
https://github.com/erensezener/aima-based-irl
熟練者の選択確率をとすると報酬はベイズより次式の事後分布で算出する事ができる。
ここで
:局面
:行動
は観測された熟練者の遷移経路
:熟練者の報酬の事前確率
:分配関数
は行動価値関数 Bellman方程式で解く
隠れ変数Rを変動させて事後分布を最大とするMAP(Maximum Posterior)をすればよい
ベイズモデルの有意性は上記の様に定式化が明確で理解し易いことにあるが、一般に事後分布は尤度関数が共役事前分布でないと理論的に解けず、MCMCによる繰返し計算が必要になる。
以下の手順で計算する。
①報酬の事前分布は一様分布とする
②MCMCを使って最適を探査する
簡単にいうと一様分布の報酬をランダムに変えて生成した熟練者の事後分布が高くなるなら、これを採用する
③生成する尤度分布は仮定されたよりBellaman方程式を解いて価値行動関数に指数比例とする(ボルツマン分布の仮定)
は熟練者の局面での最適行動
この実装では熟練者の経路から局面での最頻度行動としている。
上記のpythonの例だと熟練者の事前報酬を仮定して採用している。
④ 乱数で生成された報酬での熟練者の事後分布が、前に計算された事後分布より高くなれば、この仮定された報酬を選択する。
実験課題
課題は最大エントロフィ逆強化学習と同じ問題とする。
赤がゴール。熟練者データはOpen-AIで解いた100通りの経路とする。
実験結果
ゴールに近い所が報酬が高く、遠い所が低く計算できている。
最大エントロフィ逆強化学習よりは粗い結果となっている。これは熟練者の最適方策を単に経路データから最頻度行動を採用しているためと考えられる。